REPORT
連続講座 スライドで楽しむ物語の世界



  

 2015年 第2回 『ウルスリのすず』
          
 アロイス・カリジェ/作 大塚雄三訳/岩波書店
                  
                    

「読書会」報告 
(2016年1月20日)
スイス東南部のトルンに生まれたアロイス・カリジェの読書会に参加しました。前にCBAの読書会に取り上げたことがあり、スイスの景色とカリジェの絵の残る地域を皆で想像したものです。絵から素朴さと自然の美しさ厳しさも感じられ、心に残るものでした。最近は手にせず家の本棚の端っこにあり、忘れていました。紹介してもらった『アルプスのきょうだい』を見て、〈あれ家にあったような気がする〉と思い出して、帰ってから探しました。        
 ゼリーナ・ヘンツとの出会いにより生まれた絵本『ウルスリのすず』『フルリーナと山の鳥』『大雪』は絵と文字があって完成し、子どもの周りの自然なども安心感がみられると感想がでました。ヘンツの文の通り絵本の中のウルスリは、三角帽子をかぶり大人そっくりの格好をしたかわいらしい子どもに描かれています。
 また、今は便利ですね。『ナシの木とシラカバとメギの木』の中にあるメギの木はどんな木?すぐに係の方が調べて写真をスマホで見せてくれました。雪の中でもかわいい赤い実がみえます。『大雪』の表紙にもありました。
 山の自然の中で暮らす子どもたちは大人から様々なことを学び、厳しさを乗り越え、たくましく生きていく事を、生活しながら自然に学んでいく。大人は子どもを信頼し、子どもはルールを守り、大人のいうことはよく聞く。大人そっくりの格好をしているだけではありません。勇気もあり知恵もあります。絵本の中から私たちもたくさん学びました。 
 参加者は14人の読書会でしたが、14人の絵本への思いが伝わる会でした。               
                                     (塩澤京子)






  サンマルタン教会霊安室「光のマリア」           カリジェ墓「二人の天使」


     山の教会の光のマリア像    トルンの老人ホームに飾られているキリスト「十字架の道」


2015年 第2回 『ウルスリのすず』
          
 アロイス・カリジェ/作 大塚雄三訳/岩波書店

                  
 

「スライドの会」報告 (2016年1月25)日
最初にカリジェの年譜を見ながら、その足跡をたどりました。カリジェはトルンの農家に11人の子の7番目として生まれました。チューリッヒでグラフィック・デザイナーとして活躍しつつも、仕事に疲れを感じ、仕事に追われるのではなく、自分の仕事をしたいと、故郷に近いオーバーザクセン地方に移って画家活動に入ります。チューリッヒで幼稚園教師ゼリーナ・ヘンツと出会い、彼女の本の挿絵を依頼されますが、最初は気難し屋のカリジェは、あまり乗り気ではなかったそうです。でも、一緒に仕事をすることになってからは、ヘンツの家に6か月間滞在して『ウルスリのすず』の挿絵に打ち込んだのです。
 『ウルスリのすず』は評判を呼び、3万部発行され、現在では世界11か国170万部に及ぶそうです。
 またカリジェはドイツ女性と結婚し、2人の女の子に恵まれますが、「ズンネファング(太陽を掴む家)」と名付けたアトリエ兼自宅でベビーシッターをしていた子がひょろっと背が高いフルリーナという名で、まさに絵本のフルリーナのモデルになったのだそうです。フルリーナさんは池田先生と同じくらいのお年で、スライドには先生たちが旅行に行った時の、日本の皆さんからのお土産を手にしているフルリーナさんの写真もありました。
カリジェにまつわるスイスのスライドは、色とりどりで明るく美しく、いつものイギリスの物語の風景とは随分違っていました。駅やレストラン、教会、ホテルなど様々な所にカリジェの描いた壁画が残っており、それらの美しいスライドを楽しみました。またカリジェ自身がデザインした自身のお墓、グァルダ村にあるウルスリの家のモデル、絵本にも出てくる泉、「光のマリア」像、アトリエフルジーナスの内部など、どこもカリジェの絵でいっぱいで、とても豊かな感じがしました。
 ひととき、スイスの美しい山や村を旅したようでした。  (小金沢頼子)




   カリジェのフルージナス(アトリエ)         中には家具などにカリジェが描いた絵がいっぱい 


フルリーナのモデルになった、カリジェの娘さんたちの    ウルスリの家のモデル
ベビーシッタ―のフルリーナさん



 『ウルスリのすず』の中の泉                      絵本の泉



  シルスバンの博物館             ダボスのシュバイツァーホテル内壁画(カリジェ作)

  

   

         
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