REPORT
連続講座 スライドで楽しむ物語の世界

  

2014年 第1回 『グリーン・ノウ物語』シリーズ
         ルーシー・M/・ボストン作/亀井俊介訳/評論社
                    

「読書会」報告 
(2014年9月24日)

   

 読書会は22名の参加で行われました。
作者ルーシー・Ⅿ・ボストン夫人は舞台となったグリーン・ノウのお屋敷(1120年に建てられたノルマン人のマナー・ハウス)に住んでいて、1954年62歳の時に『グリーン・ノウの子どもたち』を、のちに続編を発表し、6冊のシリーズになりました。

各編要約
*『グリーン・ノウの子どもたち』7歳の少年トーリーが、暖かみのある神秘的な雰囲気のグリーン・ノウのお屋敷でひいおばあさんと冬休みを過ごした時の物語。昔話を聞き、遊びそして300年も前に生きていた子供たちを捜し、出会い、友達になりました。
*『グリーン・ノウの煙突』 春休み、トーリーが再びもどってきて、今度は150年前の子どもたちに出会いグリーン・ノウに伝わる宝石を探す物語。
*『グリーン・ノウの川』 夏休み、難民の子どもを含む3人がグリーン・ノウのお屋敷のまわりを流れる大きな川で、起こりえない心おどる冒険をする物語。
*『グリーン・ノウのお客さま』 次の夏休み戻ってきた難民の少年ピンが動物園から逃げてきたゴリラを守ろうとする、信じあう深い友情の物語。カーネギー賞受賞作品。
*『グリーン・ノウの魔女』 グリーン・ノウのお屋敷を奪い取ろうとする魔女メラニーにトーリーとピン、ひいおばあさんの3人が勇気と知恵で力強く立ち向かう物語。
*『グリーン・ノウの石』 石づくりの家の歴史を1人の少年の体験をとおして語った物語。もちろん今までの昔のお友達も出てきます。
なかなか本の世界に入れない人もいましたが、一度入れたら、とても楽しいワクワクするお話でした。


 ☆参加者の感想を紹介いたします。

*62歳で書かれた感性の柔らかさにびっくりし、300年昔の子どもたちを不思議と思わない主人公、また思わせない書き方が素晴らしい。
*読み終わり、イギリスにあるこのお屋敷に行きたい!と思いました。
*不思議な屋敷と庭、そこに作者が住んでいたからこそ、いくつものファンタジーの物語ができたのでしょう。
*『煙突』ではおいしそうな食べ物によだれが出るし、まるで目の前にいるように鳥たちのさえずりも聞こえた。
*何かを失ったときに自分が成長する。失ったことで得るものがある(『お客さま』)。
*子供のとき鏡や隙間に何かあるのではないかと考えたことがあったが、それが現実化してうらやましい。(豊田眞美)      





2014年 第1回 『グリーン・ノウ物語』シリーズ
         ルーシー・M/・ボストン作/亀井俊介訳/評論社


◎「スライドの会」報告 (2014年9月29日)

 今年度も池田正孝先生をお迎えして、スライドの会を開催することができました。
まずボストン夫人の略歴をお話くださいました。L・M・ボストンと表記されることが多いですが、本名はルーシー・マリア・ボストン。お父さんはサウスポートの市長だったのですが、ボストン夫人が6歳の時死去し、それ以来ルーシーはもの静かな子どもになったそうです。ボストン夫人は、1937年からこの「グリーン・ノウ」のモデルとなったマナーハウスに住み、1990年98歳で亡くなるまで住み続けました。このマナーハウスは1120年に建てられた領主の館で、原型は小さなノルマン風の館でした。四角だった屋根をボストン夫人が三角屋根に直したそうです。この屋敷は9世紀に渡って、切れ目なく家庭生活が営まれ続け、現在も使われています。ボストン夫人亡き後は、息子さんのピーターさんと奥様のダイアナさんが住んで、庭をきれいにしているとのこと。
 先生が1979年に留学した時には、グリーン・ノウを訪れ、外で働いていた青年に声をかけたところ、思いがけずボストン夫人が出てきて、家の中を見せてくださったそうです。入った途端に、グリーンノウの世界に入ったような気がしたとおっしゃっていました。2階のミュージックホール、3階の中国のちょうちん、トーリーのベッド、鳥かご、木馬、庭のグリーンディアなどなど、スライドも見せていただきました。その時以来、グリーンノウに何度か訪れたそうです。ケンブリッジから車で20分くらい。林望さんも留学した時、ボストン夫人の家に下宿し、滞在記やボストン夫人についても書いているそうです。
 グリーンノア(イチイの木)、ハンノーが身を隠した小さな森、グリーンディア(鹿の形に刈り込んだ立木)などは実際にあるけれど、物語の中の大部分はボストン夫人の創作とのこと。
 スライドのグリーンノウの建物は本当に古さを感じさせる建物でした。物語の中に出てくるように厚い壁、手入れのされた庭、屋敷の周りを流れる川など、物語の世界に思いをはせて見せていただきました。1巻目の『グリーンノウの子どもたち』について、池田先生は、トーリーが300年前の子どもたちと友だちになるには、努力と緊張、希望と失望、喜びと悲しみが交錯し、明るく楽しい夢があると同時に、甘えた態度を許さない人生の厳しさが見える物語である。だからこそ、私たちはこの物語にしみじみとした味わいを感じるのだとおっしゃって、その通りだと思いました。(小金沢)
 




  
  

   

         
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