第1回 『第九軍団のワシ』(ローズマリ・サトクリフ著・岩波書店)
◎「スライドの会」報告 (2012年5月17日)
「スライドの会」は、講師に中央大学名誉教授・池田正孝先生をお迎えし、中央図書館で行われました。 使用されるスライドは、先生が実際に物語の舞台となっている現地を訪ねお撮りになった写真を使用しています。 岩波少年文庫「第九軍団のワシ」の表紙カバーになっているお写真も先生の作品から使用されたものです。
いよいよ部屋が暗くなりドキドキ・ワクワクしながら見た1枚目のスライド写真は、本のタイトルにもなっている「第九軍団のワシ」の旗印と信じられていた
≪ワシ≫ でした。(サトクリフが生きていた頃まではそう思われていました。)
それは黒く一見するとカラスのようで、物語で主人公のマーカスが初めて目にした時と同じ様に羽のとれたものでした。 レディング博物館に実際に展示されているもので、サトクリフは本文の中で
≪ワシ≫ の残骸と表現していますが、それは黒光りし羽がないからこそ いろいろな戦いをかいくぐってきたであろう事を想像させました。
池田先生曰く、「サトクリフも取材できっと目にしたに違いない」と! この講演会の中で何度となく耳にしたフレーズで、先生の思いを感じます。
どんどんスライドが進められていき 剣闘士エスカと百人隊長マーカスが出会ったとされるカレバのローマ風円形闘技場跡やカレバの城壁。そしてローマ軍が進軍する為に作られた「真っ直ぐな道」が、雑草におおわれて人知れずひっそりとそこにある写真は、かつてローマ軍がそこにいてブリトン人と戦った事実も見せてくれました。
≪ワシ≫を盗んで隠した場所のモデルとされるオウ湖。マーカスが物語の最後で元老院から贈られた農場のモデルとされる陽当たりの良い丘陵地は、サトクリフの住まいから近い場所にあり、マーカスのアクイラ一族の家紋として使われたイルカのモザイクもそこに存在している写真も見る事ができました。
「サトクリフが物語を作りあげる上で 特定の舞台・場所・背景を詳しく取材したことが明らかで、そこにストーリーを展開させていくからこそ、物語の世界が目に見えるように描かれているのです。」と 池田先生に教えていただきました。またそこがイギリス児童文学の共通点であり、先生の大変興味ある大好きなところだと熱く語って頂き、本当にそう思いました。
次回もまた楽しみです。(高橋亜)
残念ながら、池田先生のスライドの会に参加出来なかった方へ・・・
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本作り空「おきくの児童文学の旅」
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